今日は日本画始めた人の憧れ(かな?)、絹本の制作手順をご紹介しますよ。
sacco自身の備忘録も兼ねて。
永久保存版ということでよろしくお願いします(笑)。
材料を揃える
絹本を作るのに必要な材料です。
まずは絵絹。今回は二丁樋を用意しました。絵絹にはその厚さにより、二丁樋と三丁樋があります。
二丁樋の方がより透け感が強く絹の美しさを感じます。一方、三丁樋の方はしっかりしていて絵具も良く乗るように感じます。書き心地は皆さんが経験を積んで体感してくださいね。(因みに私も素人です。)
また、幅もいろいろあります。日本画の画材屋さんで作品に応じて必要な幅、長さを購入できますよ。ネットでも購入できるようですね。ゆめ画材さんが充実していますね。
大量に制作する予定のある人は、セールの時などを狙ってロールで購入し、必要なサイズに切り分けて使うと良いでしょう。
ただし、天然素材の絵絹はゴキブリさんのご飯になったり、変色したり、経年で劣化する可能性がありますので、できるだけ2~3年のうちには使い切れる分量にしておきましょう。
絵絹を張るための木枠は使用済みキャンバスの木枠を再利用しますよ。今回はF4を用意しました。
(絹に巻き皺がついてますが^_^;、ま、大丈夫です。)
そして洗濯糊とペインティングナイフも必要です。
洗濯糊はホームセンターで売っています。
それに水張りテープも用意してください。
木枠に絵絹を貼り付ける
さて、いよいよ貼り付け作業にかかりますよ。
まず、洗濯糊の袋の端っこをハサミで切って、直径2~3mmくらいの穴を空けます。
この穴から均一に糊を絞り出します。
絵絹は木枠に合わせて裁断します。木枠より1cmくらい小さめにカットしますよ。
木枠は裏面、カーブのついていない真っ直ぐな面を使います。
カットした絵絹を木枠の上に置き、短辺の角を2箇所、画鋲で止めておきます。
(画像では右端の上下2箇所に画鋲が刺さっています。見えますか?)
絵絹は水分を含むとかなり縮みます。素早い作業が必要なので、事前に位置がずれないように固定しておくのです。
水張りテープも木枠の外側の長さに合わせて4辺分カットしておきましょう。
次に絵絹を画鋲で固定したままペロンとめくり、木枠に洗濯糊を画像のように均一に置いて行きます。木枠の内側から1cmくらいの箇所です。慣れないうちは、この均一、がなかなか難しいです。ま、多少、ブニュブニュになっても大丈夫です。
大切なのは、枠からはみ出して絵絹の描画面に糊が付かないようにすることです。
四辺に糊が塗れたら、絵絹を上からそっと被せます。
糊の水分で絵絹がどんどん縮みますので、ここからは手早い作業が必要です。
まず最初に各辺の真ん中あたりをペインティングナイフで押さえて軽く絵絹を固定します。
後は画像のように、ペインティングナイフを使って隅から糊を絵絹にしっかり圧着していきます。
木枠の内側から外側に向けてナイフを動かします(画像では、左から右へ、お腹の方に向けてナイフを動かします)。絵絹の描画面に糊がつかないようにするためです。焦る必要はないけれど手早く、です。画像でも絹が張ってきているのが分かると思います。絹は濡れるとどんどん縮みます。張りが強くなっても剥がれないように丁寧に糊を定着させますよ。
後は、更に上から水張りテープで固定して終了です。
この段階では、絵絹にドレーブが掛かっていますが大丈夫です。
水張りテープの使い方はこちらを参考にしてください。
はい、ここまでできたら本日の作業は終了です。
糊が完全に乾くまでこのまま置いておきますよ。
湯引きをする
糊が完全に乾いたら、次は湯引きです。
湯引きとは、絵絹の表面をぬるま湯でお掃除することです。
絹についている油脂成分や汚れを取り除く目的で実施します。
先ずは表面から。
ハケはたっぷりお湯を含ませます。
全体にお湯を塗りますが、木枠まで水分が入り込むと糊が剥がれてしまうのでギリギリの所で止めるようにします。最初は端から1.5cmくらい空けてハケを置くと良いでしょう。しっかり油分が落ちるよう、絹を通過してお湯がポタポタしたたり落ちるくらいが良い加減です。
全体にお湯が回ったら、木枠に水が入り込まないようにくるっと反対返し、今度は裏面から同じように湯引きをします。木枠を濡らさないように、は表面と同様です。
両面の湯引きが終わったら、タオルの上に置いて上からタオルでポンポンとたたくようにして水分を取ります。
(片手で自撮りゆえ、ぶれぶれ勘弁^_^;)
はい、お疲れ様です。この後、絹が乾くまでしばし放置です。
ドーサを引く
絹が乾いたら最終工程のドーサ引きです。
ドーサとは、絹の表面に滲み止めを施すことです。
サイジング、目止め、なんていうのと同じです。
ドーサが甘いと絵具が絹を通り越してストンと落ちてしまいます。逆にドーサが強すぎると絵具が絹に馴染みません。経験をつんで、「いい塩梅」を見つけてください。
今回は、前回作った8%の膠水を倍の水(お湯)で薄めて作りました。
約2.5%くらいの濃度ですね。
膠水の作り方はこちら↓
日本画 膠水の作り方 お手軽編 - お絵描きeveryday
この膠水にミョウバンを入れて溶かします。
ミョウバンも絵具のしみ込みを抑える効果があります。が、多すぎると画面がテカテカ光りますので入れすぎには注意です。
下の画像、ちょっと分かりにくいかと思いますが、透明なツブツブとしたものが粒ミョウバンです。約20ccの膠水に20~25粒くらいかな。
粒ミョウバンは溶けるのに少し時間が掛かるのでハケでそっと混ぜながら完全に溶かします。溶けてくると膠水が少しとろ~っとした感触になり、酸っぱい臭いがします。
後は、このドーサ液をハケで絹に塗ったら完成です。湯引きと同じように両面に塗っていきます。厚塗りはせぬように。
ドーサが乾くと絵絹はピンと張り、木枠を軽くトントンと叩くと太鼓のように絹が鳴りますよ。
仕上がりはこんな感じ。テカテカ、と光っているのはミョウバンが入っているからです。
はい、お疲れ様でした。これで絹本は完成です。綺麗に作れましたか?
さてさて、どんな作品を作りましょうか。絹の透け感を活かした画題がいいですね。繊細な描き込みにとっても向いていますよ。楽しみです。
本日の最後までお付き合いいただきありがとうございました。