本日は混合技法の支持体の作り方を懇切丁寧にお伝えしますよ。
sacco自身、何度か作った事はあるのですが、久しぶりに作ろうと思うと、あれ? どうだっけ~^_^;、と思う事が多いので(と、歳のせいか、、、)、自分の為に そして同じレシピで制作するアートスクールの生徒さんのために、そしてそして、偶然このブログを訪ねて来て下さった貴方のために 精魂込めて作ります。。。
永久保存版ということで宜しく。
ネットでもいろいろ調べてみると、比較的レアではありますが、混合技法の支持体作成レシピは何件かヒットします。そしてそれぞれに配合や手順なんかが少しずつ違います。
正直、saccoもどれがいいのか、違いはどうなのか、知りません。はい。
ニカワの配分や、石膏層の厚み、使う板の種類、もしくは麻布、和紙、等々により絵具の入り方、筆の滑り、仕上がった時の絵肌などの違いが出るようです。
ともあれ自作して、作品作って、課題問題が発生して、改善していくしかありません。
そこまで行ければ御の字です。え~い、つべこべ言わんと作りましょう。でないと何も始まりません。
で、先ず混合技法とは何ぞや、という話になりますが、こちらの記事に簡単に記載しております。
お買い物情報 シュミンケのムッシーニ(油絵の具)を買いに行こう! - お絵描きeveryday
こちらも混合技法で作成した作品です。
貴方にも作れます、こんな作品が。支持体さえ作れれば(たぶん、、)。
こちらのように、硬質な感じの金属や子細な描き込みが魅力の人物などに混合技法が適しているのでは、と感じております。
準備するもの
・板(シナベニヤ 9mm厚)
作成したい作品のサイズの板を用意します。
我が師匠などはプロの作家様であられますので、大きな板を購入し、大きめに切断して下地をまとめて制作しておき、必要なサイズに都度ノコギリで切り分けて使用されるとの事です。作家たるもの、ノコギリも使いこなす必要があります。
ま、最初のうちはコーナンのおじさんに切ってもらえばよろしいかと。
また、下地作りは冬がよろしいとのこと、寒いシーズンにアカギレ覚悟で臨みましょう。
・ウサギニカワ
画像はだいぶ昔にセールで買ったものです。通常、1kgで1万円ほどです。ちょっとお高いのが難ですが、これだけあれば嫌ほど作れます。お友達とシェアするといいですね。
・ボローニャ石膏
石膏と同じ用途で白亜を使うケースもあります。
話が長くなりすぎるので省略しますが、白亜の方が少しお安いです。
・チタニウムホワイト
こちらも1kg入りを購入しましたが、小袋でも十分でした^_^;。
因みにチタニウムホワイトのピグメント(お粉)には、アナターゼ(水溶性)とルチル(油溶性)があります。ま、どちらでも構わないようですが、一般的にはルチルを使うことが多いようです。
下準備
・ニカワの膨潤
ニカワはツブツブを水に一晩浸けて膨潤(ふやかして)しておきます。しっかり水分を吸って膨らんだら湯煎でサラサラになるまで煮溶かします。ニカワは高温で熱すると接着力がなくなりますので、必ず湯煎にします。ゴミなどが目立つ場合はガーゼで裏ごしをすると綺麗になります。
通常、7%の濃度で作りますので、500ccの水に対し、ニカワは35g。きっちりメジャーで測りましょう。
因みに膨潤したニカワは魚の煮こごりと同じですので日持ちはしません。数日に分けて作業する場合は冷蔵庫に保管し1~2週間以内には使い切るようにしてください。
・板の下準備
裁断したベニヤは紙やすりを掛けておきます。断面のソゲソゲを綺麗にするだけではなく、板の表面を軽く荒らして引っ掛かりを良くする為です。
やすり掛けが終わったら両面および側面にニカワを塗っておき十分に乾かします。
ニカワは板の反りを防ぐため両面に塗布します。
これを前ニカワと言います。ニカワは倍に水で薄めて、3.5%の濃度のものを使います。
これで板と地塗り剤の間にニカワの層ができ吸い込みがコントロールできます。
・地塗り剤の作成
準備したニカワとボローニャ石膏、チタニウムホワイトで地塗り剤を作ります。
ニカワに対して使用する石膏は容量で約1.4倍です。またチタニウムホワイトは1000ccのニカワに対して約5g程度です。事前に計量しておきましょう。
ここからはお料理教室の要領ですね。
まず、煮溶かしたニカワをボールに入れます。
(この時、ニカワは少し残しておきましょう。2割程度で良いです。後から使います。)
その上から石膏をまんべんなく振り入れます。フリフリフリ
石膏はズブズブとニカワ水の中に沈んでいきます。石膏が全体的に沈没しきって、ちょっと先っぽが見えるくらいが丁度の分量です。下の画像の感じですね。
次にチタニウムホワイトを入れます 。今回はルチル(油溶性)を使っていますので馴染みを良くするために、事前に水でクリーム状に練っておきます。
これを先ほど の石膏が沈没した上に加え、後はゴムベラで混ぜ込みます。
チタニウムホワイトをゴムベラの上でニカワと馴染ませながら混ぜ込みますよ。
地塗り剤に気泡が入ると仕上がった支持体に一杯クレーターが出来てしまいますので、気泡ができないように切るように、がポイントです。
はい、滑らかに、ダマにならず、とても美味しそうに仕上がりました。
今回はハケ塗りをしますので緩く作りました(お好み焼きくらい!?)。コテ塗りの場合はもっと固めに作ります。
地塗り剤の塗布
次に準備した板に地塗り剤を塗って行きます。
ハケを使って塗りますよ。手首のスナップを効かせる為に市販のハケの柄の部分を切り落とした専用ハケを使います。
ハケは毛の間に空気を抱き込んでいますが、これがクセモノで気泡の原因になります。ですから塗布を開始する前にハケを水の中でよ~く圧して気泡を除去しておきます。
後はこんな感じで塗り込んで行きます。
ハケにタップリと地塗り剤を含ませ、ハケのぬる方の面の地塗り剤をボールの端で軽くしごき落としてから塗り始めます。
ハケは少し手首にぐっと力を入れる感じで圧し気味で塗り込みます。
板に対して、先ずは横横、あら乾きしたら今度は縦縦、と一度の塗布で一方方向にのみ塗ります。
乾き加減は表面が濡れ色から乾き色(グレー)に変わるくらいがいい加減です。乾きが足りないと二層目の塗りで一層目が動きます。また乾き過ぎると食いつきが悪くなるそうです。塗る回数は3~5回程度です。ニ層目くらいまでは板の色が透けて見えますが三層目くらいからはしっかり板が被覆されます。
慣れてくれば三層くらいで十分だそうですが、この後の作業の紙やすりでの磨きで手こずると、どうしても層が薄くなり過ぎますので、慣れないうちは五層くらい塗るそうです。
塗っているうちに、乾燥のため地塗り剤が堅くなってきた場合は、残しておいたニカワを湯煎で溶かして追加します。
因みに地塗り層が厚くなると、それだけ絵具の吸い込みが強くなり、描画の際に絵具がうまく発色しない、なんていう事になります。もちろん薄すぎるのも駄目、絵具の定着が悪く浮いた感じになります。「よい加減」は描きながら探っていきましょう。
横から塗るか、縦から塗るか、これは作品の向きによります。最後が縦方向になるように塗ります。ハケの跡は基本的に残さないようにするわけですが、どうしても僅かなハケ跡が残った際に縦方向のハケ跡の方が仕上がった絵画への影響が少ない場合が多いからだそうです。
混合技法の美しい絵肌は、この微妙な地塗りに左右されます。ですので、とても大事な作業な訳です。(え~っと、私も今のところ理解度30%くらいです。)
はい、お疲れ様でした。むっちり石膏が入りましたね。
ここで一旦作業は終了です。この状態でしっかり乾かします。
乾かす時は埃がかからないように箱の中に入れるなどしてくださいね。
磨き
地塗り剤がしっかり乾いたら、次は紙やすりを使って表面を滑らかにします。
今回は、地塗り後2週間置きました。
紙やすりは耐水のものを使います。画像は三種類ありますが、400,1000の二種類で大丈夫です。
先ずは荒い方の400番の耐水ペーパーで磨きます。
ペーパーにタップリ水をつけて、螺旋を描く感じで端からもれなく磨きを入れます。
水はタップリですが、水滴がボタっと板に落ちない程度にしてください。
ゴシゴシゴシと磨くと、表層の地塗り剤が削れて水分が粉っぽくなります。
この粉の混ざった水分を速攻で手のひらですり込んで表面を滑らかにします。
デコの部分を削ってボコに埋め込む感じです。
手のひらの親指の付け根あたりをしっかり押しつけてます。体重を掛けてグイグイ行きます。結構重労働ですよ。
しっかり滑らかになっているかは、光を横から当ててすみずみまで確認します。目立ったデコやボコがある場合は、その部分をさらにスリスリ、ゴシゴシしますよ。
一通り綺麗になったら、次は1000番のヤスリを使って同じ作業を繰り返します。
最後にまた光を当てて確認しましょう。この段階で、板はツル、ピカっと光っています。
お疲れ様でした~。
インプリミトゥーラ
磨きが終わったら、板に一層目の絵具の層を作ります。これをインプリミトゥーラと言います。
先ず絵具を作ります。
ピグメント(顔料)をパレットにこんもりと置きます。その上から水滴をポタポタ落としてパレットナイフで転がす感じで馴染ませます。水分が軽く馴染んだら、エッグメディウムを少しずつナイフで取って、調子を見ながら良く混ぜ合わせます。しっかり練り込むと光沢感が出てきます。これで絵具は完成です。
※ 今回はテールベルトを選びました。その他、良く使う色としてはイエローオーカがあります。地塗りの色は作品に微妙に影響するので、仕上がりのイメージを意識して色を選択します。特に上から塗る絵の具を薄く透明色にして、地塗りを活かす場合などは効果的な色を選択すると良いでしょう。陰色の抜け感はこのようにして作る場合があります。
エッグメディウムは卵から作ることが出来ますが、毎回作るのも面倒なので、今回はルフランのビンに入ったメディウムを使いました。
できた絵具は、水でシャブシャブに薄め、
ハケで塗っていきます。
地塗りの時と同じく、横横、縦縦、で最後は作品の向きに対し縦方向になるようにしてハケを終えます。
刷毛塗りをすると、始めは絵具をはじいて馴染みませんが、一通り絵具が置けた後、絵具をつけずにハケだけで何度か刷り込んでいくと、徐々にハケ跡が目立たなくなり馴染みます。
ただし、先に書いたように、このインプリミトゥーラを仕上がった時にチラ見せしたい場合はわざと筆跡を荒らしたりして変化を付けるのもアリのようです。
はい、お疲れ様でした。
これでやっと混合技法を描くための支持体が完成しましたよ。
なかなかに長い道のりでした。苦労はしますが、混合技法ならではの美しい絵肌はこうした下作業から産まれるのです。
ステキな作品を目指してチャレンジしてみましょう!
本日もお付き合いありがとうございました。
いや~、長かった